最近やったこと

小川哲史の「嘘と正典」を読んだ。

嘘と正典

嘘と正典

 

 

HELLO WORLD」をみた

https://movies.yahoo.co.jp/movie/366465/

 

「ピータールー マンチェスターの悲劇」をみた

https://gaga.ne.jp/peterloo/

 

 

日記9

 

 先日のことです。年に3回程度遠くの友人Kに会う機会があります。再開の知らせは季節の移り変わる時期を起点に突然SNSを通してやってくるのですが、今日集合する土地はここ東京で、それも遊び慣れた渋谷です。

 

 日当たりの悪い窓の前にぽつんと座り、煙草に火をつけ敬愛する御社へのお便りをしたためているとやがて外も良い頃合いとなり、私は縒れたチャンピオンのスウェットから他所行きの装いに着替え始めます。今日はいつもの大酒飲みたちもいないので手持ちの洋服のなかでも極めて気に入ったニットを選んでも汚れる心配は要りません。

 

 そうして多くの地方人達がそうするようにJR渋谷駅の忠犬ハチ公の前に集まった私たちは観光客の向けるカメラに写り込むことなど素知らぬ顔で目的地の大衆酒場を目指します。ハチ公像から京王井の頭線に向かい、大きな横断歩道を渡った先の、斜め左の通りをまっすぐ歩いて焼き鳥の山家などの不釣り合いなほど年季の入った名店を横目に、さらに奥、黄色い看板の小さな酒場に入ります。それまで一言も言葉を交わさない我々も一杯180円のハイボールを一息でグイッと飲み干して、二杯目半ばに差しかかる頃には、顔を赤らめながら近況について饒舌になります。単純純粋無垢な私以外はセンシティヴかつ教養深い淑やかな人ばかり。浮世の話に耳を傾けながら私はひたすら串焼き盛り合わせの身をほぐす作業に徹し、ここぞとばかりに日頃の鬱憤をブチ撒け、ああでもない、こうでもないと議論を交わします。お酒の力もあるでしょう、皆渾々と勇気が湧いてきます。しかし再会の喜びに近況報告も一段落を迎え自ずとそのような流れになったのでしょう、話題は生き死になどにすら向かい酒に飽き始めた私たちはひっそりと煙草を燻らせながら泣き始めるのです。

 

 お勤めをおえたサラリーマンたちの声も徐ろに大きくなり始めた頃我々は居酒屋を後にしました。近くのセブンイレブンで買った珈琲を啜りました。飲酒の後の温かい飲み物は良い覚ましです。飲み屋から流れる生暖かい、油の混じった空気を浴びながらもどことなく再会につきまとう時間を感じるのはそうであるからこそ良いものです。そしてまた我々はあの大きな横断歩道で手を振り別れとりあえず帰路につきました。